はじめに
夏場の光熱費は、飲食店経営にとって大きな負担のひとつ。特に2025年の電気料金値上げの影響により、冷房を効かせた快適な空間を保ちつつ、コストをいかに抑えるかが重要な経営課題になっています。
この記事では、「エアコン使用の工夫」「厨房設備の省エネ化」「時間帯別の節電戦略」など、すぐに使える具体策をご紹介します。
目次
1. エアコン使用の見直しと最適化
✔ 推奨施策
- 設定温度は27〜28℃を基準(扇風機併用で体感温度を調整)
- 風向きの最適化:エアフロー設計で冷気が客席全体に循環
- 定期フィルター清掃:月1回以上の実施で冷房効率を維持
💡 導入アイデア
- 天井に「サーキュレーター」を設置して空気を循環
- CO2センサーと連動した省エネ自動制御システムの導入
2. 厨房設備の見直しで熱源を減らす
✔ 節電ポイント
- ガスコンロ使用時の換気効率UP → 熱気が客席に回らない設計
- IH調理器やスチームコンベクションの導入で放熱抑制
- 厨房機器の「待機電力」カット(冷蔵庫の扉開閉時間を短縮)
⚠️ 注意点
- 調理動線を考えないと逆に作業効率が低下するため、事前レイアウトの検討を
作業効率が低下するレイアウトの例
- 調理と盛り付けエリアが遠く、何度も往復して時間ロス
- 複数人が交差する動線でスタッフ同士がぶつかる
- 冷蔵庫の開閉に動線を遮られてストレスが増加
レイアウト検討で改善できるポイント
- 「最短距離で一連の動作が完了する」動線の設計
- 1人分のスペース幅を確保し、交差を避けるレイアウト
- 冷蔵庫・シンク・コンロを三角形に配置する「トライアングル動線」
厨房動線チェックリスト
3. 営業時間帯に応じた節電戦略
開店前:冷房は最低限+事前冷却
- 開店60分前までは送風や自然換気中心
- 直前15分で冷房を稼働し、室温を下げる
ランチピーク:冷房集中稼働+ゾーニング
- 客席中心の空調運転で効率的に冷却
- 未使用スペースのエアコンはOFFか弱運転
アイドルタイム:照明・空調を最小限に
- 照明を一部減光し、省エネモードに
- 厨房・客席を分けて冷房調整
ディナータイム:照明強化+エアコン効率重視
- 照明で雰囲気演出しつつ、冷房は循環重視
- 扇風機・サーキュレーターで冷気を拡散
閉店後:順次オフ+余熱活用
- 閉店1時間前から順次照明・空調をオフ
- 厨房余熱を利用し、後片付け時間を短縮
✔ 時間別対策例
- 開店1時間前の空調稼働は最小限に(事前冷却→節電モード切替)
- 客足の少ない時間帯は空調をエリアごとに管理(ゾーン冷房)
- デリバリー/テイクアウト中心の時間帯は客席エアコン停止も検討
【ランチ営業型】平日昼中心の店舗
- 11:00前後の開店時は自然換気+低運転で冷却
- ピーク時の空調強化、14:00以降はOFF方向へ
- 照明は昼光利用+LEDで部分点灯
【居酒屋型】夜営業メインの店舗
- 日中は冷房停止/最低限で厨房のみ冷却
- 17:00頃から徐々に冷房、ピークは20時〜
- 夜間の照明演出にLED+調光調整で省エネ
【土日祝】混雑が予想される営業日
- 開店前からフル稼働よりも段階冷房が効果的
- ピーク時間を分散させるための予約管理が鍵
- 厨房スタッフの配置も稼働時間帯に応じて調整
【定休日前後】低稼働を意識した運用
- 営業終了後は設備を完全OFF、電源・ブレーカー確認
- 前日は仕込みと冷房調整で余分なエネルギーをカット
- 冷蔵庫温度や扉開閉管理を徹底して効率維持
【ハイブリッド型】昼夜ともに営業する店舗
- 客数の少ないアイドルタイムを節電モードに
- 厨房・ホールで冷房ゾーニングを導入
- 「回転率」と「滞在時間」に応じた空調制御を検討
4. 電気料金プランの見直し
✔ チェック項目
- 契約電力・基本料金を適正化(過去使用量に基づく再設定)
- 時間帯別料金プラン(ピークシフト)」の活用
- スマートメーター導入で使用量を見える化
5. スタッフ教育と運用ルール
✔ 省エネを習慣化するポイント
- 「冷蔵庫は1回でまとめて開ける」などの具体行動を共有
- 光熱費の目標値をスタッフと共有し、月次で振り返り
- 店内掲示「節電ルールPOP」設置で行動喚起
6. 店舗リニューアル時の設備投資アイデア
✔ 投資検討候補
- インバーター式エアコンに交換 → 電気代30〜40%削減可能
- LED照明・冷暖房分離設計 → 客席は冷、厨房は排熱を逃がす
- 補助金活用(省エネ設備導入補助)で初期コストを抑制
まとめ|快適さとコストバランスを両立しよう
光熱費の高騰が続く今、対策の第一歩は「ムダなエネルギーを見える化」し、現場でできる改善を積み重ねることです。
無理な我慢ではなく、“快適さと効率”の両立こそが、長く愛される飲食店経営の鍵です。