飲食店経営の健全性をはかる指標のひとつが「FL比率」。
よく耳にするこの言葉、なんとなく使っていませんか?
本記事では、FL比率の基本的な意味から、理想値、業態別の目安、改善のポイントまでを解説します。
数字の裏にある“現場のリアル”も交えながら、利益を守るヒントを掘り下げていきましょう。
FL比率とは?|Food(食材費)とLabor(人件費)の合計
FL比率とは、売上に対する「食材費(Food)」と「人件費(Labor)」の合計割合を示す経営指標です。 FL比率(%)=(食材費+人件費)÷売上高×100FL比率(%)=(食材費+人件費)÷ 売上高 × 100FL比率(%)=(食材費+人件費)÷売上高×100
たとえば|FL比率の計算例
月商
300万円
食材費
90万円
人件費
75万円
FL比率
55%
計算式:
(90万円 + 75万円) ÷ 300万円 × 100 = 55%
FL比率が高い(例:72%)
売上100万円に対して、食材費35万円+人件費37万円
粗利益率:28%
改善ポイント:メニュー原価の見直し・オペレーションの効率化
FL比率が適正(例:60%)
売上100万円に対して、食材費30万円+人件費30万円
粗利益率:40%
改善ポイント:定期的な見直しで維持・コストのバランス維持
FL比率が低すぎる(例:45%)
売上100万円に対して、食材費20万円+人件費25万円
粗利益率:55%
改善ポイント:人件費削減が過剰な場合、サービス低下リスクあり
簡易FL比率計算
理想のFL比率は何%?|一般的な目安と考え方
**理想的なFL比率の目安は「55%前後」**とされます。
これは、以下のようなバランスを想定しています。
内訳 | 割合の目安 |
---|---|
食材費(F) | 28~30% |
人件費(L) | 25~27% |
合計(FL) | 53~57% |
この割合であれば、残りの売上45%で家賃・光熱費・広告費・減価償却費・利益をまかなえる計算になります。
実際の現場はどうか?|理想と現実のギャップ
「理想は55%だけど、うちは60%を超えている…」
こんな声もよく聞きます。
FL比率が高くなってしまう要因は、以下のようなものがあります:
- 原材料費の高騰(特に輸入品・生鮮品)
- シフトの非効率(人手不足/過剰配置)
- メニュー設計の甘さ(原価率が高すぎる)
- 単価の安さ(高稼働でも利益が出にくい)
- 売上の季節変動
現実には、業態や立地によってFL比率の理想は変動するため、単純な数字合わせではなく、「その店に合ったバランス設計」が必要です。
業態別のFL比率目安
業種によって、食材費や人件費のかかり方は大きく異なります。
業態 | FL比率目安 | 備考 |
---|---|---|
ファストフード | 45~50% | 作業効率が高く、人件費が抑えやすい |
居酒屋 | 55~60% | 食材費・人件費ともに高め。回転率が重要 |
カフェ | 55~65% | 単価が低くFL比率が上がりやすい |
高級レストラン | 60~70% | サービスや食材の質を優先。利益率は低め |
テイクアウト専門 | 40~50% | 人件費が低めでFL比率を抑えやすい |
「理想の数字」よりも、「業態に見合ったFL比率」を目標にすることが大切です。
FL比率を改善する7つの方法
FL比率を改善するには、食材費・人件費の両面からのアプローチが必要です。
✅ 食材費の改善策
- 食材ロスの削減(仕込み量と廃棄の見直し)
- 原価率の見直し(高原価メニューの調整)
- 仕入れ先の見直し・一括発注による交渉
- 季節食材や地元食材の活用
✅ 人件費の改善策
- 作業動線の最適化とオペレーションの簡略化
- ピークタイム重視のシフト設計
- マルチタスクができるスタッフの育成
これらの改善はすぐに効果が出るものもあれば、継続的な取り組みが必要なものもあります。
まずは現状を把握し、小さな改善から始めることがポイントです。
まとめ|FL比率は「利益体質」をつくるバロメーター
FL比率は、単なる数字ではなく、飲食店の体質と未来を映す鏡です。
- 「なぜこの比率なのか?」
- 「このバランスで利益は出せるのか?」
- 「現場に無理が出ていないか?」
と、数字の背景を分析し、改善策を打っていくことが重要です。
理想は“利益が出る仕組み”をつくること。
無理にFL比率を下げることではありません。
まずは、自店の現状を知ることからはじめてみましょう。