はじめに|「売上=成功」ではない時代
飲食店の経営で最も注目される数字といえば「売上」。
しかし、売上が多くても利益が出ない店は少なくありません。人件費や食材費がかさみ、気づけばキャッシュが足りない、という状況に陥ることも。
売上はあくまで結果の一部。「何にお金を使い、何が残っているか」を把握することが、安定した経営には不可欠です。
この記事では、飲食店経営者が毎月(できれば毎週)チェックすべき5つの基本的な数字を厳選して解説します。
1. FL比率(Food & Labor)
FL比率=食材費+人件費 ÷ 売上 × 100
飲食店の経営指標として最も基本的かつ重要なのが「FL比率」。
理想は55〜60%以下とされており、これを超えると利益が出にくくなります。
たとえば:
- 食材費30万円、人件費28万円、売上100万円 → FL比率:58%
✔︎ FLが高いときのチェックポイント:
- メニュー原価と売価のバランスは取れているか
- 無駄なロスや廃棄がないか
- シフトの人員配置は適切か
2. 営業利益率
営業利益率=営業利益 ÷ 売上 × 100
売上がどれだけあっても、コストを差し引いた後にどれだけ利益が残るかが重要です。
理想は10%以上ですが、5〜7%でも黒字店舗として健全とされます。
✔︎ 利益率を下げる要因:
- 高すぎる固定費(家賃・リース)
- 割引・キャンペーンのやりすぎ
- 労働時間に見合わない稼働
3. 損益分岐点売上
損益分岐点=固定費 ÷(1 − 変動費率)
この数字を知ることで、**「最低限いくら売れば赤字を防げるか」**が明確になります。
例えば、固定費が50万円、変動費率が60%なら…
→ 50万円 ÷(1−0.6)= 125万円の売上が必要
✔︎ ポイント:
- 月ごとに変動費が変わるので、定期的に見直しを
- 雨や閑散期の前に、戦略を立てやすくなる
4. 客単価 × 客数(売上構成要素)
売上=客単価 × 客数
どちらか一方だけを追いかけるのではなく、両方のバランスを整えることが大切です。
✔︎ 客単価アップのアイデア:
- セットメニューやトッピングの提案
- ドリンクやデザートの追加注文を促すオペレーション
✔︎ 客数アップの工夫:
- SNSやチラシ、地域連携など集客活動の強化
- 再来店を促すポイント制度やサービス
5. 人時売上高(1人1時間あたりの売上)
人時売上=売上 ÷ 総労働時間
例:1日の売上12万円、労働時間が合計24時間 → 人時売上=5,000円
この数字は人件費の使い方の効率性を表します。
低すぎる場合は、シフトの見直しやオペレーション改善が必要です。
✔︎ 改善ポイント:
- 混雑時間帯の人員集中と、閑散時間帯のスリム化
- 作業の平準化・無駄の削減
まとめ|「数字に向き合える店」は、強い
売上は目に見える指標ですが、利益や効率は見えにくい数字です。
しかし、それこそが経営の土台であり、「数字を見て、現場を変える力」が飲食店の未来を左右します。
今回紹介した5つの数字は、いずれも特別なツールがなくても毎月把握できるものばかり。
「なんとなく経営」から卒業し、数字に基づく意思決定を実践していきましょう。