〜選ばれる店は「値段」より「理由」で決まる〜
はじめに
飲食店のメニューや価格設定は、単なる「売れる仕組み」ではなく、お客様に“お店の世界観”や“価値”を伝える重要なブランド要素です。
本記事では、個人店・中小店舗でもすぐに実践できるメニュー・価格戦略を8つの視点で紹介。価格に自信が持てず悩んでいる方、ブランディングを再考したい方におすすめの内容です。
1. ブランドの軸に基づいたメニュー設計
- やること:人気商品の開発背景やエピソードを説明文に反映
- 伝え方:メニュー表/POP/SNS/Webなど
ストーリーがある商品は「価格以上の価値」を感じてもらいやすく、価格競争に巻き込まれにくくなる利点もあります。
2. 看板商品にストーリーを
人気メニューには、「なぜそれを出しているのか」「どうやって生まれたか」のストーリーを持たせましょう。それがブランドの人格となり、価格以上の価値を顧客が感じるきっかけになります。
ポイント:「自分の店は何屋か?」を明確にし、その軸で全メニューを統一。
店舗ジャンル | ブランド軸 | メニュー例 |
---|---|---|
和食居酒屋 | 旬と素材重視 | 季節の煮物/炙り魚/地酒セット |
カフェ | 癒しと非日常 | 花咲くスイーツ/手作りハーブティー |
「このメニュー、うちっぽくないな?」と思う品があれば要見直しです。
3. 高価格帯でも納得される設計
単に高く設定するのではなく、「この価格で納得」と思ってもらえる設計が重要です。希少性、丁寧な工程、接客・空間の体験など、料理以外の価値も含めて伝える工夫を。価格は情報であり、顧客の期待値をコントロールするツールでもあります。
- 価格の根拠:手間・産地・職人技・空間・接客 なども訴求材料に
NG例: 原価の高い料理を高値で出しても、顧客に理由が伝わっていなければ割高に見えることがあります。
4. 価格帯の幅で顧客層を整理する
メニュー構成に幅を持たせることで、さまざまな目的の来店に対応できます。ランチやテイクアウトでの“お試し価格”、ディナーでの“ご褒美価格”など、価格のメリハリはブランドの懐の深さを表現します。
価格帯 | 目的 | 顧客層 |
---|---|---|
~1,000円 | 気軽に試す | 初来店・学生・ランチ層 |
1,000~2,500円 | 日常利用 | ファミリー・ビジネスマン |
3,000円以上 | 記念日・接待 | 高単価志向・常連 |
価格帯を段階的に持つことで、幅広い利用シーンに対応しやすくなります。
5. 利益率で見ない、価値の設計で考える
つい「原価率」や「利益率」でメニューを組みがちですが、ブランディング視点では「顧客が感動する価値」と「価格の納得感」のバランスが大切です。結果的にリピートやファン化によって利益は回収されていきます。
原価率は大事ですが、「感動した」「また来たい」という心理的価値の方がリピートには直結します。
- お得に感じる → 満足度UP
- 納得できる価格 → クレーム回避&紹介に繋がる
6. メニューの見せ方もブランドの一部
メニュー表のフォント、レイアウト、写真、説明文のトーンまでがブランドの一部。高価格帯の料理に手書きメニューやチープな印刷はNG。オンラインでのメニュー表示にも一貫性を持たせると印象が格段にアップします。
- フォントや紙質、写真のトーンを統一
- スマホ対応のオンラインメニューも最適化
印象に残るメニューほど、その場の空気とブランド体験を補強する力があります。
7. セット・コースの構成で世界観を演出
セットメニューやコースは「選びやすさ」の提供だけでなく、世界観をまとめて伝える手段でもあります。ブランドらしい順序・流れ・内容の組み合わせで、顧客に自然と価値を感じてもらえるように設計しましょう。
ブランドに合った“流れ”を持つコース料理は、単品では伝わらないストーリー性を補ってくれます。
- 前菜:地域食材を使った冷菜
- メイン:看板商品を軸に
- デザート:余韻を演出する甘味
8. 値上げも「物語」で伝える
原価高騰の時代、値上げは避けられない場面もあります。しかし「なぜその価格になったのか」を誠実に伝えることができれば、ブランド力の向上にもつながります。SNSや店内掲示などで、その想いや背景を丁寧に共有しましょう。
「申し訳なさ」より「誠実な共有」が信頼を育てます。
価格改定の背景(原材料高騰・仕入れの変化・品質維持など)を、POP・SNS・接客トークでしっかり伝えましょう。
まとめ|価格は“選ばれる理由”のひとつ
価格とは単なる金額ではなく、「その店らしさを伝える要素」のひとつです。料理の質だけでなく、店の想いや世界観、もてなしの姿勢までも含めた「価値設計」が、価格に反映されていくのが理想のブランディング。価格を下げずに選ばれる店へ──その第一歩は、メニューに込めた“ブランドの言語化”から始まります。
価格とは、「料理の質」だけでなく「価値の設計と伝え方」によって決まるものです。
料理+接客+空間+ストーリーを一体化させることで、価格を下げずに選ばれるブランドへと育てていきましょう。