はじめに|飲食店にこそ「5W1H」が必要な理由
飲食店の現場では、「なぜうまくいかないのか」「なぜスタッフ間で対応がバラバラなのか」といった課題が起きがちです。
このような問題は、指示や教育の「言語化」不足が原因であることが多く、そこで活躍するのが「5W1H」フレームです。
接客マニュアル作成やスタッフ育成の土台として、5W1Hを取り入れることで、現場力が飛躍的に向上します。
1. 5W1Hとは?|定義と飲食店での活用視点
項目 | 意味 | 飲食店での例 |
---|---|---|
Who | 誰が | 新人スタッフ、ホールリーダーなど |
What | 何を | 注文を取る、謝罪する、片付ける |
When | いつ | 入店直後、料理提供後、混雑時など |
Where | どこで | 客席、レジ、厨房との境など |
Why | なぜ | 顧客満足向上、効率化、クレーム防止 |
How | どうやって | 笑顔で一礼、手順書に従って、声かけで確認 |
- 【Who】 どのようなお客様か(常連・初来店・団体)
- 【When】 混雑状況・時間帯に応じた声掛け
- 【Where】 案内する席の配慮(快適さ・導線)
- 【What】 ご来店時の第一声や印象づけ
- 【Why】 お客様が心地よく過ごせる導入を意識
- 【How】 明るく丁寧に「いらっしゃいませ」と挨拶
- 【Who】 誰が注文しているかを正確に把握
- 【When】 注文タイミングを逃さずキャッチ
- 【Where】 メニューや位置関係に応じた応答
- 【What】 注文内容の復唱でミス防止
- 【Why】 提供ミスを防ぐための基本動作
- 【How】 丁寧な確認と復唱「ご注文は〜でよろしいですか?」
- 【Who】 誰に提供するかを確認
- 【When】 ベストタイミングでの提供
- 【Where】 提供場所に安全配慮
- 【What】 品名を伝えてお渡し
- 【Why】 お客様の満足度を左右する瞬間
- 【How】 丁寧に「○○になります」とお声がけ
- 【Who】 代表者やグループ分けの確認
- 【When】 混雑時でも丁寧に応対
- 【Where】 レジでの対応/テーブル会計
- 【What】 金額・内容の確認・おつりの間違い防止
- 【Why】 最後の印象=次回の来店に直結
- 【How】 感謝を込めて「ありがとうございました」
- 【Who】 全員に見送りの挨拶を
- 【When】 退店のタイミングを見て即反応
- 【Where】 出口付近で対応(安全も配慮)
- 【What】 明るく一言添えると印象UP
- 【Why】 最後の瞬間も「また来たい」に直結
- 【How】 「またのご来店お待ちしています!」
- 【Who】 誰が関わっていたか
- 【When】 どのタイミングで起こったか
- 【Where】 現場・対応中など状況把握
- 【What】 具体的なミス内容
- 【Why】 なぜ起こったか(要因分析)
- 【How】 どう対処し、再発防止を考えたか
- 【Who】 誰に教えるか、性格や特徴も配慮
- 【When】 教えるタイミング(繁忙期を避けるなど)
- 【Where】 落ち着いた場所で説明や実演
- 【What】 教えるべき基本スキル・流れ
- 【Why】 理由もセットで伝えると理解が深まる
- 【How】 優しく・繰り返し・実践形式で
- 【Who】 誰からのクレームか?(例:お客様/同席者)
- 【When】 いつ発生したか?(例:注文時/会計時など)
- 【Where】 どこで発生したか?(例:テーブルNo./電話対応)
- 【What】 何が問題か?(例:提供ミス/異物混入)
- 【Why】 なぜ発生したか?(例:伝達ミス/衛生不備など)
- 【How】 どのように対応したか?(例:謝罪・交換・上司報告)
感情ではなく「事実と対応」を記録すること。
対応後の再発防止策も共有するようにしましょう。
2. 接客マニュアルの課題を5W1Hで見直す
多くの飲食店では、マニュアルが「手順」に偏り、**なぜその行動が必要か(Why)**が抜けがちです。
たとえば――
- ✖「注文を受けたら厨房に伝える」→ ✔「なぜ?:提供スピードを落とさないため」
- ✖「笑顔で挨拶する」→ ✔「なぜ?:第一印象がリピート率に直結するから」
このように「5W1H」で補足するだけで、マニュアルの納得度と実行力が変わります。
3. 5W1Hによる「対応基準」の可視化と共有例
シーン | Who | What | When | Where | Why | How |
---|---|---|---|---|---|---|
お客様が来店 | ホール担当 | 挨拶・席案内 | 入店直後 | エントランス | 最初の印象を良くするため | 笑顔+「いらっしゃいませ」+一礼 |
クレーム対応 | リーダー | 謝罪・再確認 | クレーム発生直後 | 客席 | 早期収束・信頼回復 | お詫び→状況聴取→店長報告 |
このように、5W1Hでスタッフ行動を言語化・定義化することで、「誰が」「どこまで対応するか」が明確になります。
4. スタッフ育成への活用方法|OJTの軸にする
5W1HはOJT(On-the-Job Training)における教育テンプレートとして活用できます。
OJT(On-the-Job Training)とは?
OJTとは「職場での実務を通じて行う教育訓練」のことです。実際の業務をこなしながら、必要なスキルや対応力を身につける教育手法です。
- 現場に即したスキル習得を効率よく行う
- 先輩社員・上司の指導により接客レベルを統一する
- 即戦力化と定着率の向上を目指す
- 接客・配膳・注文の流れをロールプレイ形式で習得
- 厨房内の動線や衛生管理を実務ベースで体験
- トラブル対応のパターンを5W1Hで解説+反復指導
- 指導マニュアルを用意し、属人化を防ぐ
- 指導する側(トレーナー)の事前研修も行う
- 振り返りとフィードバックの時間を必ず設ける
✔ 活用ステップ:
- まず「Why(なぜ)」を説明して納得させる
- 具体的な「What/How(何をどうするか)」を見せる
- 「When/Where/Who」で再現条件を共有
これにより、スタッフの「なぜそれをするのか理解しないまま動く」という事態を防げます。
5. ワンポイント|「Why」が伝われば自走型スタッフが育つ
💡 Why=理由が理解できていれば、Howは自ら工夫できる。
指示待ち人材を減らし、現場判断できるスタッフを育てるには、「Why」が最も重要です。
5W1Hで土台を整えることは、教育の省力化と質の向上の両立に繋がります。
まとめ|5W1Hで「マニュアルから現場力」へ
5W1Hは、飲食店の属人化を防ぎ、誰でも再現できる業務設計を支える基本です。
接客マニュアルや研修プログラムを5W1Hベースで見直せば、チームの統一感・育成スピードが大きく変わります。
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