はじめに|コンセプトとは「軸」であり「旗印」
飲食店の成功は、料理やサービスの質だけでなく、「何のために、誰のために存在しているのか」を明確に伝えることにかかっています。
この“想い”を言語化し、形にしていくのが「コンセプト設計」です。
なんとなく始めた店と、明確なコンセプトのもとで開業した店では、時間とともに大きな差が出てきます。
スタッフの意識、お客様の支持、ブランディング、そして収益性までもが変わるのです。
本記事では、飲食店経営におけるコンセプト設計の重要性と、誰でも実践できる8つのステップをわかりやすく紹介します。
なぜ飲食店にコンセプト設計が必要なのか?
飲食店は競合が多く、選ばれる理由がなければ生き残れません。
その中で「この店は○○がいい」と伝わる独自の魅力が、コンセプトです。
コンセプトがあれば…
なぜ?:「誰のための店か」が明確になれば、発信や商品構成も一貫性が生まれます。
- 顧客像を具体化
- SNSや看板に活かせる
- 集客が効率化
なぜ?:コンセプトがあることで、接客・判断基準が共有され、チームの統一感が出ます。
- 採用・教育の軸になる
- 接客マナーに統一感
- 理念共有による定着率UP
なぜ?:「店らしさ」に合うかどうかで判断すれば、迷いが激減。統一感のある空間づくりができます。
- メニュー開発の基準に
- 空間・BGMの方向性が明確
なぜ?:誰に何を伝えるかが定まり、発信がブレずに済みます。
- 言葉と写真の統一
- ブランディングが加速
- 広告費の最適化
なぜ?:共感を呼ぶコンセプトが、自然とファンを増やし、再来店や紹介につながります。
- ストーリー性のある店に
- 顧客が店を応援してくれる
- 口コミが広がりやすい
つまり、**店の方向性を一貫させる「羅針盤」**になります。
コンセプトを「決める」vs「決めない」違いとは?
たとえば同じラーメン店でも、コンセプトが明確な店は…
- 「無化調・国産素材で子育て世代に優しいラーメン」
- 「深夜2時まで営業、濃厚豚骨で〆たい若者向け」
のように“誰に・どんな価値を”提供するかが明確です。
一方、コンセプトがないと…
- メニューがぶれる
- 来店客が定着しない
- 店主の迷いや試行錯誤がコストになる
結果として「なんとなく良いけど印象に残らない店」になりがちです。
STEP1:原点に立ち返る「なぜこの店をやるのか?」
まずは自問自答です。
- なぜ飲食店をやりたいのか?
- 誰にどんな想いを届けたいのか?
- どんな食文化を広めたいのか?
この段階では、言葉が整っていなくてもかまいません。
想い・経験・違和感など、自分の中にある感情を洗い出すことが重要です。
STEP2:ターゲットを明確にする
届けたい相手=お客様像を具体化します。
- 性別・年齢・家族構成
- ライフスタイル(仕事帰り?子連れ?デート?)
- 価値観(健康志向?コスパ重視?映え重視?)
ターゲットを狭めるのではなく、「誰に一番刺さるか」を考えることで、結果的に幅広い共感を生みます。
STEP3:提供価値を言語化する
自店ならではの「提供価値」は何か?を考えます。
- 素材のこだわり
- 調理法やメニューの工夫
- 空間・接客・サービスの特長
例:「手間ひまを惜しまない、季節の発酵ごはん」
例:「ひとりでも居心地よく過ごせるビストロ」
商品や空間を通して“どんな体験”を提供するかがポイントです。
STEP4:競合分析で差別化ポイントを探る
同業他店をリサーチし、自店の立ち位置を見極めます。
- 価格帯・メニュー構成
- 店舗の立地と客層
- SNSや口コミでの印象
ここで重要なのは「差別化」。
「似ているけど違う」独自性を見つけ、コンセプトに落とし込んでいきます。
STEP5:一言で言えるキャッチをつくる
「伝わる」コンセプトには、一言で語れる明快さが必要です。
たとえば…
- 「一汁三菜で心をととのえる朝食カフェ」
- 「燻製とクラフトビールの隠れ家」
- 「地元野菜を使った、小さな子どもと食べる家庭の味」
この一言が、広報・ブランディング・採用・メニュー開発すべての軸になります。
STEP6:コンセプトを形にする(メニュー・空間・接客)
言語化したコンセプトを、店のあらゆる要素に反映させます。
- メニュー名や料理の構成
- 店内インテリア・BGM・照明
- スタッフの服装や接客トーン
お客様は「言葉よりも体験」で店を判断します。
言語化 → 具体化 → 体験化のサイクルが重要です。
STEP7・8:発信と再確認でブレない運営を
ステップ7|SNS・Webサイト・メディアで一貫して発信
どんな写真を使うか、どんな言葉で語るかも、コンセプトから逆算します。
ステップ8|定期的にコンセプトを再確認
1年に1回でもよいので、初心に立ち返り「想い」がブレていないかチェックします。
成長に応じて微調整も必要です。
まとめ|コンセプトがある店は、応援される
飲食店は「モノ」ではなく「体験」と「想い」を売る商売です。
それを形にするコンセプトは、店の土台であり、未来をつくる設計図でもあります。
想いを言語化し、それをお客様に伝えることで、応援される店・選ばれる店になります。
迷ったときは、原点のコンセプトに立ち返りましょう。
そこに、あなたの店を続ける理由と、お客様の心に届く力が眠っています。