はじめに|「夜営業だけでは利益が出ない」時代へ
コロナ禍以降、飲食業界の収益構造は大きく変化しました。以前は夜営業中心で黒字化できた業態も、今では「夜だけ」では立ち行かないケースが増加しています。
このような状況で注目されているのが、業態転換や時間帯別の2業態運営といった柔軟な営業戦略です。
時間帯・曜日によって変える“稼ぎ方”
なぜ業態転換や複業態が必要なのか?
- 夜だけ営業では売上が頭打ちになる
- 固定費(家賃・人件費)を有効活用できていない
- 週末偏重の経営から平日も収益を生む必要性
飲食店のピークタイムは限られています。その中で利益を最大化するには、空いている時間を収益時間に変える工夫が必要です。
成功事例|時間帯別業態設計で売上2倍へ
以下に、時間帯別で業態を分けることで売上を伸ばした事例を紹介します。
事例紹介1:カフェ×バルの二毛作戦略
昼(11:00〜16:00):スイーツ・カフェドリンク中心の
女性向けナチュラルカフェ
夜(17:00〜23:00):小皿料理・ワインで楽しむ
カジュアルバルスタイル
- 売上:1.8倍 → 月商 約320万円
- 人件費:昼・夜でスタッフ分散し効率化
- 客単価:夜に3,000円台までアップ
- フードロス:夜営業で食材消化
昼夜で客層・メニューを大胆に変える!
ある都内の飲食店では、時間帯別に“二毛作”スタイルを導入することで、 売上が1.8倍 に増加。限られた店舗スペースとスタッフを活かして、効率的な経営に!
二毛作導入前と後の比較表
項目 | 二毛作導入前(終日カフェ) | 導入後(昼カフェ・夜バル) |
---|---|---|
営業時間 | 11:00〜19:00 | 11:00〜16:00(カフェ) 17:00〜23:00(バル) |
客単価 | 約950円 | 昼:約1,000円 夜:約3,000円 |
1日平均来店数 | 約50名 | 昼:約40名 夜:約30名 |
日商 | 約47,500円 | 昼:約40,000円 夜:約90,000円 |
月商(25日営業) | 約1,187,500円 | 約3,250,000円(約2.7倍) |
主な客層 | OL・主婦層 | 昼:女性中心 夜:会社帰りのペアや女性グループ |
スタッフ構成 | パート2名 | 昼:パート1〜2名 夜:正社員+アルバイト1名 |
食材ロス | やや多め | 夜メニューで食材使い切りが可能に |
【事例2】平日は定食ランチ、週末はイベントディナー
事例紹介2:平日は定食ランチ、週末はイベントディナー
平日(11:30〜14:30)
- 近隣オフィス層向けに日替わり定食を提供
- 提供スピード重視・回転率向上
- 原価率30%前後に抑え利益確保
週末(17:00〜21:00)
- 「日本酒×地元食材」などのイベントディナー開催
- InstagramやLINEで告知し来店動機を創出
- 単価アップで週末に集中利益確保
導入結果
- 平均月商:65万円 → 112万円(約1.7倍)
- 平日と週末の稼働率が安定
- 固定人員で2業態運用し人件費も抑制
- 平日昼:オフィスワーカー向け定食ランチ
- 週末夜:コース仕立ての体験型ディナー(要予約制)
- 結果:客単価が平日1,000円 → 週末5,000円へ
ダブルブランド戦略とは?
1つの店舗で、2つの異なるブランド(業態)を展開する方法です。看板やメニュー・SNSアカウントなどを分け、ターゲット層を変えることで集客力を高めます。
💡カード形式紹介:ダブルブランド運用のポイント
① 明確なターゲット設定
昼と夜で客層・単価を変え、訴求内容を明確に。
② メニュー構成の工夫
同一食材でもアレンジで差別化し、ロス削減。
③ SNSアカウントを分ける
昼夜別で運用することで情報の混乱を防止。
スタッフと設備の運用をどう最適化するか?
項目 | 昼営業 | 夜営業 |
---|---|---|
人員構成 | 少人数、短時間パート中心 | フルタイムまたは経験者中心 |
設備 | コーヒーマシン、簡易調理器具 | グリル、アルコール設備など本格装備 |
オペレーション | テイクアウトにも対応 | 接客・調理の同時進行が多い |
効率よく運用するには、スタッフのマルチタスク化やシフトの柔軟設計が不可欠です。
カフェタイムやテイクアウトを活かす運営アイデア
- 14:00〜17:00の“アイドルタイム”を有効活用
- Uber Eatsや出前館との連携で在庫ロス軽減
- カフェメニューや軽食で利益率アップ
近年では、テイクアウト・中食市場も拡大しており、時間帯ごとの商品設計は戦略の要です。
平日と週末で異なる“顔”を持つお店に
「曜日別メニュー」「イベントデー」「週末限定コース」など、曜日による変化を取り入れることも差別化につながります。
おわりに|収益構造の再設計こそが未来を拓く
現代の飲食業界では、「一つのスタイルに固執する」のはリスクです。
時間帯や曜日で業態を変えることにより、売上・固定費・人材の活用を最大化するヒントが見えてきます。